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精神分析とはon Psychoanalysis

心理療法を求める理由は人によってさまざまです。

職場や家庭環境から生じる問題を解決したいと思ってやって来る人もいるでしょう。何となく不安だったり、不幸せだと感じたりする人もいるかもしれません。 とにかく自分を変えたいという人も多いはず。いつも同じような対人関係のトラブルに陥ってしまう。同じような人から、なぜいつも同じような苦痛を味合わさ れ ることが多いのだろう、などなど

歴史的背景

精神分析は二十世紀のはじめ、ウィーンの神経学者ジークムント・フロイトによってはじめられたものです。心理的な問題を持つ人の情緒を理解するための画期的な方法と考えられました。

彼が考えたのはこうです。

どんなに理性的に生きている大人であっても、その理性的な側面はその人の全人格のごく一部に過ぎない。理性的な人格の下には無意識があり、不合理な考えで満ちている。人は無意識の力にかなりの部分影響されて生きているに違いない。
彼の考えに基づいて、まず考えられた精神分析の基本原則は「無意識を知ること」です。今まで見えなかった自分の無意識を少しでも知ることができるようになると、情緒的な 成長や発達、安定した自分の感覚を得られるようになることがわかりました。もちろん現代の精神分析はこれだ けではありません。約百年の間にさまざまな考え方や理論、技法が発展しています。

「無意識を知ったらかといって何だというのだ」

そう考える人もいるかもしれませんが、それも一つの正解です。人間の心の構造は単純なものではありません。現代の精神分析はさまざまな角度から人間の内面 を探っていくものに発展しています。

日本でも次第に知られつつありますが、アメリカではセラピーというと一つのイメージがあります。長いす(カウチ)にクライアントが横になり、セラピストは 後ろで話を聞く。クライアントは「自由連想」をして、夢を分析する。コメディ映画やドラマでみたことがある人もいるかもしれません。実は、これらは全て精神分析の特徴です。

心理療法(サイコセラピー)はいろいろな種類があり、精神分析以外の考え方もたくさんあります。精神分析だけが効果的だというわけではありません。ただ、精神分析は最も伝統的な心理療法の一つで、第二次世界大戦以降アメリカで急速に広まりました。それ以来すっかり固定イメージができてしまい、心理療法の代名詞のように扱われることがあるのです。
しかし当のアメリカ人でも、なぜカウチを使うのか、「自由連想」とは何か、なぜ夢を分析するのか、本当には良く知りません。アメリカ人にフロイトを知って いる かと聞くと、大抵知っていると言います。中には、フロイトの著作をたくさん読んでいる人もいるようです。それでも精神分析とはほんとうはなんなのか、よくわからない人の方が多いのです。

精神分析療法の特徴は

精神分析は、注目点、深さ、方法の面で他の心理療法とは異なっています。一般の心理療法はある特定の問題を助けるものであることが多いのですが、精神分析 は一つの問題でも全人格が関わって生じると考えます。そのためひとりの心の動きでも、あらゆる角度から繰り返し見ていきます。自分を知ることが行動や態 度、情緒的安定度を変えるために最も大切なことだと考えるのです。

精神分析を受ける人も、最初は自分を知りたくてはじめたと言うより、とにかく今苦しんでいることから楽になりたいと思ってはじめた人のほうが多いようで す。例えば不安や、不眠、抑うつ感や、トラウマなどの心理的な問題から楽になりたいと。

でも精神分析療法がすすむにつれ、そして自分を 知ることがどういうことかがわかってくるにつれて、自分の症状や対人関係の問題の多くが自分のさまざまな性格や周りの人の性格と深く絡み合ってでき上がっ ていることがわかってきます。

精神分析は、私たち成人のこころはそれまで成長してきたさまざまな年代の影響を受けていると考えます。誰しも、順調に成長してきた年代もあれば、苦労して きた年代もあるはずです。それ以外に自分が気付かないうちに、どこかで「ひっかかって」しまっている年代があるかもしれません。

大人として、社会的には成功している人でも、何か気付かないうちに引きずっている年代があると、それは無意識の中に残っています。知らないうちに自分の情 緒生活に影響を及ぼしているかもしれません。内面的には、何となく自信が感じられなかったり、混乱しやすかったり、落ち込んだり、何かを恐れたりなど、捉 えきれない感情がときに自分の意識の中に入り込んでくることもあります。

一番多いのは、同じような体験を繰り返してしまうことです。自分の恋愛はいつも同じようなパターンになってしまう。職場の上司が変わったはずなのに、私は また同じことに悩んでいる。人間のこころには同じことを繰り返す傾向があることが知られています。嫌だと思っていることでも、なぜか繰り返してしまうのは そのせいです。全てがその人の問題ではもちろんありませんが、何パーセントかは自分の無意識がそこに影響して繰り返されていることが多いのです。
精神分析療法はこれらの気持ちを「ぱっと取り除いてしまう」ことはできません。精神分析療法は今までよくわからなかった無意識の記憶や感情、願望、期待に 触れることを助けるためのものです。それを知ることによって、結果的にさまざまな人生の側面の変化を生じさせ、自分の人生をより弾力的に過ごせるようにな ることを助けます。

話すこと

精神分析療法は分析家に自分のことを話すことによって、心の変化を引き出そうとするものです。話す内容は、自分の感情、感覚、体験、夢などです。

専門的にはもちろん「話せば治る」という単純なものではありません。分析家とクライアントとの間で時間をかけて作っていく二人の関係自体がもっとも大切なものと考えます。精神分析をはじめると、クライアントは全てのことを分析家に打ち明けます。現在の問題、関心があること、仕事、学校、友人や恋人、夫婦の関係、子どもや両 親に対する感情、思春期や子どもの頃感じていた ことなど、どんなことでもその時大切だと感じることは全て話します。
全てを話すことによって、現在おかれている状況をよく理解することができ、どうすればよいのかが見えてくるでしょう。自分に与えられた時間ですから、自分 の言葉で自由に話すことができます。分析家のコメントを待つまでもなく、自分自身で新しいことを知ることができる場合もあります。相手はどのように聞いた ら良いのかきちんと学んでいる専門家ですから、友人に話すのとは全く意味が違います。

もちろん、全てを話すなんてできないと思う人もいるかもしれません。当然です。全てを話さなくてはいけないわけではありませんし、そもそもすべてが話せるわけがありません。。もし話せないと思うなら、 話せないことをありのまま伝えればよいのです。なぜ話せないのかをともに見ていくことで、何かがわかるはずです。

分析家は話の内容の良し悪しを判断するわけではありません。またどんな話であっても真剣に受け止めます。クライアントは、心に浮かんだことはどんなことで も、浮かんだまま全て話すように伝えられます。自分自身でこんな話は価値がないからと判断してしまわないように求められます。「自由連想」という考え方です。

伝統的には、クライアントはカウチに横になり、分析家は後ろで話を聞くとというスタンスが一般的です。現代では誰もがそうするわけではありませんが、カウ チに横になることによって、分析家の表情を気にすることなく、自由に考えを漂わせることができることが多いのです。奥深くにある自分の感情や思考に触れる ためには、この方法がより良いと考えられています。もちろん、どんなことを語っても秘密は守られるように決められています。

精神分析療法は、自分の心に正直になるために、安心できる場所を提供します。自分の過去の歴史を振り返るだけでなく、過去を再体験します。再体験する中 で、新しい方法を知り、過去と現在の葛藤をつなぎ合わせながら自分を知っていくのです。その新しい体験が、自分のこころを変化させる最も大きな要因です

精神分析家の仕事

精神分析的心理療法
精神分析的な考え方に基づいて行われる心理療法で、精神分析療法のスタンダードに当てはまらないものです。多くの場合1回45分のセッションを週に1回、 または2回の面接を行います。精神分析家とともに、長期にわたり自分の生活スタイルから過去の体験やトラウマまでさまざまなことを繰り返し話し合います。 自分がどんなことに傷ついてきたのか、どんな体験を本当は求めていたのか、自分でも認識していなかったものもテーマになります。養育者から共感されず、焦 点を当てられなかった情緒体験は、言葉が与えられないまま無意識にとどまります。あるいは、表現することを喜ばれなかった体験は、普段体験する自分自身と は異なったもう一人の自分として隔離されてしまいます。精神分析家と関係の中には、それまで体験できなかったもの、それまで体験した外傷的体験の両方が展 開されます。分析家との関係性を通して情緒体験を調整し、安定的な自己感覚をできるだけ恒常的に得られることを目指します。

精神分析療法
伝統的な手法に基づく成人・思 春期を対象とした精神分析療法です。団体よって考え方の違いはありますが、 ニューヨークに本部を置くNAAP精神分析学会の基準では、1回45分のセッションを週に3回以上、カウチに横になって集中的に面接を進めるものを精神分 析療法と呼びます。アメリカの多くの独立型精神分析研究所が、このスタンダードを採用しています。面接の頻度が多いことで、精神分析的心理療法と比べより 深く自分の心を知る作業になると考えられていますが、費用や時間の問題で現実的とはいえません。実際には、多くの方は週一回の精神分析的心理療法を行っています。栄橋心理相談室にもカウチを用意してありますが、カウチの使用が必ずしも望ましいとは限りません。患者さんによっては、対面式で面接を行った方が良い場合 も ありますので、どちらが望ましいかは話し合って決められます。

コンサルテーション
短期の相談やコンサルテーションは、精神分析療法とは異なります。より現実的な問題や、心理療法 家や精神科医の紹介、選択に関する相談などが中心です。

電話相談
伝統的な精神分析は電話による心理療法・コンサルテーションをあまり良いものととらえない傾向があります。しかし、実際にはますますグロバール化する世の中で電話による長期的・短期的精神分析も決して珍しいものではなくなってきています。短期・長期を含め電話でのセッションを日常的に行うニューヨークの精神分析家は決して稀ではありません。ただし、精神分析という特殊な心理療法を電話での相談に用いるには、電話の特性が何か、精神分析の特性とは何か、その意味を充分に知っておく必要があります。電話という媒体で行われるセッションは、その手法そのものの影響を患者と分析家の間で積極的に話し合う必要が出てくることでしょう。                                                               

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